- 富士講独自の文字について(基本編)
富士講を含む角行系宗教では独特の文字が用いられます。
従来異文字などと呼ばれてきたもので、例えば「イ+杓」を一文字に書き「クウ」と読ませてみたり、左上から「有+日+月+天」と一字に組んで「ソク」と読むなど、日常見ることはない文字の一群が有ります。このWebpageでは便宜的に創始者の名前をとって「角行系文字」と呼ぶことにします。「富士講文字」と呼ぶほうが通りがいいような気もしますが、使っているのは彼らだけではないので、この名はあえて避けます。
これらは全容が解明されていないので、正確に何文字あるのかわかっていません。実数としては数十から多くても五十字以内だと思われますが、伝説的には百八あるとも数百あるとも言われています。さらに書き手によって微妙な差異がしばしば生じ、結果多くのバリエーションが存在します。
角行系文字は主に彼らの教義と関連して用いられますが、行者としての人名(彼らは現実の名前と行者としての名乗りを使い分けていました)や彼らの神話に現れる神々の名前にも用いられます。
当然、これらの文字はそのままでは電子的に扱うことができません。彼らと彼らを研究する人以外に知る人がいないのですから。また、漢字文化圏の文字を網羅すべく造られている『今昔文字鏡』にも現段階では収録されていません。
Windowsの外字領域でこれらを作成して使っている人もいると聞きますが、ベースにしているフォントに著作権があるため、個人的に使用する用途以外に使うことはできません。そこで私は2000年末ごろから、著作権をクリアして頒布できるようなWindows用の外字キットを造りはじめています。完成はいつになるやらわかりませんが・・・。フォント(TTFファイル)にしなかったのは、(1)日本語と混在する環境で使われるのでへたな領域に割り当てられない(2)これから増えていく可能性があり、その度に改版できるようにしたい、などの理由からです。
私も従来より書院というワープロ専用機のシリーズを愛用していたので、富士講の論文を書く時などはその外字領域で作成したものを使っているのですが、もはや製造元のシャープでは書院シリーズの開発は1999年以降止まっており、東芝や松下といったワープロ専用機を出していたメーカーの撤退が相次いでいることを考えるといつシャープも撤退を表明するかわかったものではありません。何よりWindowsのパソコンでこれらの文字を扱えないのは不便きわまりないことです。研究の促進のためというよりは自分のために、何とかしたいものです。 - 富士講独自の文字について(このWebpageでのルール)
実は、上の項は前置きで、ここからが「ご注意」となります。
角行系文字を表現するためにはいくつかの方法が考えられますが、ここでは一般的な(機種依存文字ではない)文字や記号を以って代替したいと思います。もちろん●などはよく使われるので、それを避けてあまり頻度の高くないものを選ぶことにします。また、上の項で「書き手によって微妙な差異がしばしば生じ、結果多くのバリエーションが存在します」と書いたのですが、これらの「振れ」も一文字に吸収したいと思います。例えば「イ杓」の場合、「イ狗」「イ拘」「イ枸」などの「振れ」が考えられるのですが、それらを分けて考えずにお互いを「異体字」と見なすということです。もっともどれが正字にあたるかを断定することは難しいのですが。さておき、とりあえず頻度の高い角行系文字を列挙すると以下のようになるでしょう。天南 = 「ちち」(ある時点での食行は「はは」)
元イ酉 = 「はは」(ある時点での食行は「ちち」)
大彳南 = 「ごう」
イ杓 = 「くう」
有月 = 「そく」
日天日王、日玉、玉日、王月 = 「がん」
このように書くと非常に不恰好ですが、実際にはこの組み合わせをうまく都合して一字にしていると考えてください。また、食行はいわゆる『一字不説の巻』を書いていた一時期、「ちち」・「はは」の字を逆転して用いていた時期があるようです。しかし、無用の混乱を避けるため、ここではそれを無視します。「ちち」=「天+元+南(のバリエーション)」・「はは」=「イ+酉+天(のバリエーション)」とします。
これらにどの記号や文字を割り当てるかはいろいろと考えられるところですが、キリル文字などはどうでしょうか。このWebpageでロシア語を扱う可能性はまずありません。とはいえ、既存の他の文字などと見分けがつかないものもありますので、それらを除外してアルファヴィート順にあてはめます。
「ちち」 = Б(大文字のべー)
「はは」 = Г(大文字のゲー)
「ごう」 = Д(大文字のデー)
「くう」 = Ё(大文字のヨー)
「そく」 = Ж(大文字のジェー)
「がん」 = Ц(大文字のツェー)
私の使っているIMEはMS-IMEですが、「ろしあ」と打つと文字の候補まで挙げてくれます。それを見ながら順繰りに当てはめていきました。ここで扱う角行系文字はもっと増えるかもしれませんが、そのときはまた考えます。キリル文字を使い切ったらギリシャ文字や記号を使えばいいでしょう。大文字でダブるものは小文字を用いればいいことです。ただし、「がん」のみは「旺(おう・学習参考書を扱う出版社の名前でこの字を使う会社がありますね)」で代用します。やはり漢字のほうが親しみやすいでしょうから。ただし、前にも書いたように字の「振れ」はこの字で全て吸収します。つまり日ガン・ガン心・月ガンの「ガン」は彼らの自筆文書(ただし日ガンの自筆は見たことがない)においてすべて細部が違いますが、全てこの字で表記するということです。
上の置換え文字を使って富士講で使われる五行お身抜を作ってみましょう。Б
參明藤開山天
Г
ДЁ大Ж妙王Ж躰拾坊光Ё心
南無仙元大菩薩大我
ДЁ大Ж妙王日鬼王王万大我
南無長日月光仏大我
相門言心金仁い開風心白生我者なんちゅー組み合わせでしょうか(苦笑)。実際は「日」と「王王万」の両脇に小さい口の字が字数分付きますが、私の技術ではうまく表現できません。また、「妙」や「鬼」は正確にはこの字ではありませんが、それもカンベンしてください。文字の高さが揃わないので、お身抜のように文字間隔を揃えなければならないときは注意が必要です。実際、今のお身抜はtableタグでまとめていますが、エディタなどでそれらしく打ってもうまく表示されません。
実はもう一組、捨て置けない組み合わせがあります。それは食行の師である月行「曾月」「小中」の後ろ二文字(これで「そうじゅう」と読む)です。ここもキリル文字を当てて「月行ИЛ」と表記しましょう。Й(イ・クラートコエ)は紛らわしいので使いません。Иは大文字のイー、Лは大文字のエルです。
これらの表記を使うと、たとえばこんな文になります。
「食行身禄Ёの師は月行ИЛであり、月行の師は旺Ц心である」
以上、8文字の角行系文字について、暫定的にこのWebpageでの表現方法を定めます。今後もし必要があれば増えることになるでしょう。Update!
食行は「第」のくずし字を用いて「三国第一山」の「第」を表現しています。「第」は「弟」と同じくずしをとり、食行の思想を論じる上では「第」=くずし字=「弟」としなければ不都合が出る部分があります。そのくずし字は現行の文字セットにないので、角行系文字と同じように出力原稿では赤字で書かねばなりません。故にこのくずし字を角行系文字に準じる扱いとし、П(大文字のペー)Ф(大文字のエフ)を割りあてます。用例:「三国П一山」「三国Ф一山」(2001/5/06)ПはЛと紛らわしいので訂正し、かわりにФを用いることにします。(2001/06/03)Update!
「旺」をガンとして用いるルールを廃止します。やはり漢字と角行系文字がダブるのは避けるべきだと考え直しました。よって、下表に従って「Ц」を使用する事にします。(2001/10/28)使用可能な文字・使用中の文字を一覧すると以下のようになります。現段階ではキリル文字とギリシア文字以外の文字の使用 を考えていません。これでも足りなくなったら改めて考えたいと思います。
АБВГДЕЁЖЗИЙКЛМНОПРСТУФХЦЧШЩЪЫЬЭЮЯ
абвгдеёжзийклмнопрстуфхцчшщъыьэюя
ΑΒΓΔΕΖΗΘΙΚΛΜΝΞΟΠΡΣΤΥΦΧΨΩ
αβγδεζηθικλμνξοπρστυφχψω
凡例・使用不可、使用中、未使用
以上、使用可能31文字、うち使用中9文字。(2001/10/28) - サンスクリット語表記の扱い
このWebpageの中でたまにサンスクリット語を扱うことがあります。主として梵字を扱うときです。これも角行系文字と同様プレーンテキストでは扱えません。現行の翻字法ですと、nなどの上に点や長音記号などがつくためです。そこで、京都―ハーバード方式(KH方式)と呼ばれている方法を用いることにします。以下はサンスクリットのアルファベット順に並べたものです。
母 音 a A i I u U R RR L e ai o au
喉 音 k kh g gh G
口蓋音 c ch j jh J
反舌音 T Th D Dh N
歯 音 t th d dh n
唇 音 p ph b bh m
半母音 y r l v
歯擦音 z S s
気 音 h
ヴィサルガ H
アヌスヴァーラ M一般的な表記法だと下に点がつくような字が大文字になるのが基本です。鼻音はその列の有声音を大文字にします。RR(rの伸ばして下点つき・リー)についてはqという表記もあるらしいのですが、まず使わないからRRで構わないでしょう。これを使っていくつか真言を書いてみましょう。
六字真言 oM maNi padme hUM
般若菩薩 oM dhIH zrI zruti vijaye svAhA
普賢菩薩 oM vajrAyuSe svAhA
不動明王慈救呪 namaH samantavajrANAM caNDamahAroSaNa sphoTaya hUM traT hAM mAM
電子の世界ではともかく、現実世界で使われるとかなり違和感を感じそうな気がします(苦笑)。 - 著作権についてUpdate!(2014/08/13)
Homeにもあるように、リンクはご自由にお付けくださって結構です。削除やファイル名の変更により切れても構わないのなら、別にHomeでなくても構いません。ただし、サーバの負荷を軽減したいので画像とダウンロード用ファイルに直接張ることはご遠慮ください。
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